静謐な彼女の頭の中の金の針

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 漫画や小説でよくあるやつ。他人の心の声が聞こえるっての。あれは嘘だ。いや、本当だ。  僕は他人の頭の中が聞こえる。そういう事象があるのは本当だ。幻聴では無く。  けれど、「声」が聞こえるのは(まれ)だ。殆どは、言語化するところまで辿り着いていない、ただの音。そういう音に邪魔されて、折角言語化された部分も聞こえない。僕にも、当の本人にも。そんなのばかりだ。  雑音。雑音。雑音。  教室に人が、雑音が、溢れてくる。世界は、僕は、鳴り止まない雑音の底に沈んで、息ができなくなる。生まれてからずっと、僕は溺れている。
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