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すてきなパンダ
上野動物園のシャンシャンを二回見に行ったことがある。上野で生まれ、つい最近、中国に返還されていったあの子だ。
初めて見た時は、ころころの赤ちゃんだった。立てた丸太の形をした遊具のてっぺんに、お腹だけくっ付けて、五体をだらりと重力に預けていた、それもお尻を向けて。私は洗われる芋のように流されていきながら、小さなお尻の写真をどうにか撮った。
二回目は、コロナ禍が始まった頃。外出自粛が叫ばれる中でも、赤ちゃん時代とそう変わらない人気を誇っていた。かつてよりじっくり見られたのは、たまたま私が芋流しの最後の一個だったからだろう。
隣の部屋のお母さんと変わらないくらい大きくなっていた。でも、手元と口元しか動かないお母さんと比べ、仕草はすごく元気で幼くて、ああ若いんだなぁと思わせた。こちらを向いて座り、柔らかそうな細い笹をワーイワーイとばかりに全身を使って食べていた。
そんな思い出。返還のニュースを眺めるにつけ、私の心の中のシャンシャンも鮮やかに蘇る(鮮やかといっても、白と黒なんだけど)。
空に向かってどんどん木を登るのが上手なのに、肝心のその動きを見せてくれなかったり。
ちゃんと食べているんだかいないんだかわからないけど、とにかくとても愉しそうだったり。
私の世界とは比べ物にならない狭い部屋の中だというのに、とても快さそうに過ごす姿を見せてくれた。
コロナ禍で返還が何度も延期になったのも、なんだかシャンシャンらしい。
うーん、好きだなぁ。
どうか、ずっと元気でね。
きっと何があっても、どこに行っても、あなたはあなたらしく生きていけるような気がする。
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