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後から 聞いた話だ
フクロウは 見た!
血塗られた頭巾の人間が
森に向かって投げつけた
茶色オオカミの亡き骸は
後から走り出て来た
太った大きな人間が拾い上げ
再び テントの中に
持ち帰った
その後 テントの裏側で
血塗られた頭巾を被った人間は
太った人間に 大声で罵られ
何度も 殴られ
蹴られ 踏まれ
泣きわめいていた と!
フクロウは
森の動物たちを集めて
皆に 言い聞かせた
「人間は どんな動物よりも
頭が悪く 凶暴で 残酷だ
毒を 見分ける能力がなく
全身が毒に侵され
まともな判断能力が失われている
そのため
仲間うちで 暴力を振るい
傷つけ合い 殺し合っている
奴らに 近づいてはならぬ
奴らに 姿を見られてはならぬ
あの 森の近くに立てられた
赤いテントは
森の動物たちを大虐殺するための
恐るべき司令塔なのだ
あのテントの赤い色は 血の色だ
血塗られたテントの中で
血塗られた頭巾を被った人間が
奇しい音楽や太鼓を鳴らしながら
猟奇的な殺害を楽しんでおる
動物の腹は無惨に 掻っ捌かれ
臓物は根こそぎ抉り取られ
骨まで抜き取られた 挙句
その亡き骸は 狂った人間どもに
面白おかしく 弄ばれるのじゃ
ワシは この目で 確かに見た!
血塗られた頭巾を被った人間が
皮だけにされた動物の亡き骸を抱え
森に向かって走って来たかと思うと
その亡き骸を草むらに 打ち捨てた
まるで ボロ切れのように
何の躊躇いもなく
夜露に濡れた 草むらの中に
亡き骸は捨てられた
人間は 我々動物の命など
一枚の枯葉程度に思っている
それどころか 人間は
同じ 人間の命さえ
枯葉程度に思っているのじゃ
まったく
頭が悪いということは
悲しいことじゃ
仲間同士で 傷つけ合い
殺し合うことが
どうやら楽しくて
やめられないらしい
いいか
たとえ 森で
人間の亡き骸を発見しても
決して
触れたり食べたりしてはならぬ
奴らの体は 毒の塊だ
毒に侵された全身は麻痺して
大自然の掟を判断する能力を失い
奴らは ただ ただ 闇雲に
狂った命で 悲しみの砂漠を
永遠に彷徨っているのじゃ
そんな毒に侵された 人間に
決して 近づいてはならぬ
ところで・・・
この 恐るべき真実を
命がけで 明らかにしたのは
ここにいる 次期 森の王
銀色オオカミじゃ
銀色オオカミは
勇敢にして冷静な態度で
あの血塗られたテントに忍び込み
ことのすべてを見て来た
凶暴な人間を相手に
静けさの中で 冷静沈着に
思考し 判断し 対処したから
すべての謎を
解き明かすことに成功したのじゃ
銀色オオカミ は まさに
森の王者に 相応しい 神通力を
身に着けた
長い間 森の王として
心血を注いで働いてきた
お父上に 代わって
銀色オオカミが
王の位を 引き継ぐ時が
来たのではないだろうか
今回の 銀色オオカミの働きは
まさに その王者としての
知恵と勇気と威厳を
明かにするための
神の 試練ではなかったか! 」
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