粛々と

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あんなに人が集まっているのは 何か企んでいるに違いない 普段は オオカミの住む この森を恐れて 人々は近づかないのに なぜ わざわざ この森の近くにテントを張り 目立つような赤い光を灯し 音楽まで響かせているのだろう オオカミである 俺を 挑発しているとしか思えない  俺が 遠巻きに テントを睨んで 唸っていると 背後から フクロウの声が聞こえた 「まあ 待て 早まるな  アレは新種のワナかも知れん  いきなり飛び込んでは危険だ  少し 様子を伺ってみよう」 フクロウは 昔から 森を見守ってきた 森の長老だ フクロウは 何でもよく知っている 俺が生まれる前  この森が 今の何倍も広く たくさんの動物たちが暮らしていたという 時代のことまで 知っている 俺は フクロウの言葉を聞き 大木の陰に潜み 静かに  赤いテントの様子を  観察することにした
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