粛々と

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星もない夜だった 暗闇の中で 赤く光る ドングリ頭のテントからは 軽快な音楽が鳴り響いていたが やがて 音楽が止み いろいろな人間の声が聞こえてきた 優しそうな女の子の声 恐ろしげな男の声 シワガレた婆さんの声 突如 不気味な太鼓が ドロドロドロドロ と  鳴り響いたかと思うと ギャ〜ッ! きゃあああぁぁ! ひえぇーーーっ! 人々の悲鳴が聞こえてきた な なんなんだ?! やはり コレは何か  大掛かりな ワナかも知れん 楽しい音楽で 人々をおびき寄せ その人間たちの肉を食らう とんでもない化け物が  あの 不気味なテントの中で 待ち構えているに違いない 俺は 震え上がって フクロウを見た フクロウは 大きな丸い目を 不安に引き攣らせている 俺は もう  居ても立っても居られない気持ちになり 人間たちが 悲鳴を上げて泣き叫ぶ テントの中へ 飛び込んでみたくて たまらなくなった  が フクロウは そんな俺を見て 静かに 制した 「危ない!!  あんなに大勢の人間たちが   悲鳴を上げている中へ  今 飛び込むのは 非常に危険だ  何事も 念には念を入れ   静かに 観察することが肝心だ  チャンスは 必ず到来する  その瞬間を 見逃すな  それが できる 知恵と忍耐を  持っているものこそ   真の王者 と言えるのじゃ  わかるな オオカミよ  おまえは やがて  森の王になろうという  期待のヒーローなのじゃ  落ち着け!  つまらぬことに関わるな  多少の強弱に関わらず  どんな命も 一つしかない!  常に 冷静沈着であれ!  静けさの中で 冷静沈着に  思考し 判断し 行動する  それこそが  王者たるものの威厳である」
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