粛々と

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俺は 全神経を集中し こっそり テントの近くまで行って 入り口から 中を覗き込んだ 中には 真っ赤な血の色に染まった 大きな布が 張り巡らされ 同じ 真っ赤な血の色の服を着て 血の色の頭巾を被った 人間が  ぼんやり 立って こちらを 見ていた 俺は 心の準備もなく 不意に その人間と 目が合ってしまった 心臓が飛び出しそうに 高鳴る 『落ち着け!  どんな時も 落ち着いて  静けさの中で 冷静沈着に  速やかに 全体を観察するんだ』 フクロウなら そう言うに違いない 俺は ピクリともせずに 目だけ動かしてテントの中を観察する 血塗られた真っ赤な頭巾を被った人間も 同じように ジッと立ち止まったまま 俺を 観察しているらしかった   他に 人影は見えない だが 血塗られた布が 張り巡らされた奥の方に なんと! ふざけた顔のオオカミらしき姿を発見! 俺は この異様な雰囲気に圧倒され 恐怖に怯え 体が石のように 固まってしまった  fc5afd99-07a4-4dcc-a3cc-fd22ffcce34d こんな時 フクロウなら どうするだろうか どうするのが正解か 頭の中で アレコレ 思いを巡らせてみた すなわち・・・ 結局  ここが何なのか? 何のために  このテントは この場所に 立てられているのか? その存在の真実について 何の収穫も得ず 何一つ わからないまま フクロウの元へ 帰るのは あまりに情け無い  ああ 困った! どうする 俺は 正直 泣き出したい気持ちだった 静けさの中で  戸惑いと 不安という 目に見えない縄が ジリジリと  俺の全身を縛り上げていく 石のように固まっている 俺の目の前には 同じように 石のように固まっている 血塗られた頭巾を被った人間と ふざけた顔の オオカミがいた
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