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と・・
いきなり 人間が 話し始めた
「こんばんは オオカミさん
あ あなたのことよ
立派な銀色の毛皮を纏った
オオカミさん
少し お話ししませんか?
いつまで こうしていても
仕方がないわ
だから お互いの幸せのために
ここは 話し合いで
解決しませんか?
悪いようにはしません
あ その つまり
私はまだ 死にたくないけど
あなたも 死にたくないでしょ
だから その
もしも ほしいものがあるなら
何でも あげますから
命 以外なら・・・
何が ほしいか言って下さい
お金? 食べ物? それとも
お花? ええっ と それとも
それとも それとも 何かしら
ああ 考えつかないわ
お願い 何とか言って!
お願い 私を食べないで!
お願い 何がほしいか言って! 」
人間は だんだん声を震わせて
今にも 泣き出しそうな顔で
そう言うと
また 黙り込んで固まってしまった
そうか
人間は 俺が 何か 欲しくて
ここへ来たのだと
勘違いしているらしい
俺が 人間を食いたい などと
誤解しているらしいが
正直 俺は それほど飢えてない
否 むしろ 飢えていたとしても
人間なんぞ 絶対に 食うものか!
人間は何を食っているかわからない
人間は毒を平気で食う
多分 かなり頭が悪いので
毒を 毒として
見分ける能力がないらしい
体中から 毒の匂いがしているのに
能天気に 笑いながら暮らしている
人間の肉なんぞ 誰が食うか!
それにしても この人間は
なぜ血塗られた頭巾を被っているのだ
森の動物たちへの威嚇か?!
自分に近づくモノたちは
血祭りにあげるぞ!
という脅迫か?!
そのクセ いざとなったら
俺に怯え
欲しいものは何でもやる
などと ぬかしおって
だらしない
所詮 人間なんて
その程度の生きものなのだ
と 考えていた が
ハッ とする
人間の背後に鎮座する
ふざけたオオカミ野郎は
相変わらず微動だにせず
俺を監視している
クソッ!
奴の 目的は何だ?
あの 落ち着き
あの 威風堂々たる態度はどうだ
つい 奴の存在を忘れるところだった
静けさの中で
己の気配を 完璧に消し去り
微動だにせず
俺を 見張り続けている
何とも言えない不気味な存在
余裕があるのだ きっと
体はそれほど大きくないが
物凄い技を持っているかも知れない
妖術を使うかも知れない
油断はできぬ
俺たちは また
静けさの中で
互いの思惑を探り合いながら
睨み合いを続けることとなった
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