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三章:カフェにて
注文したコーヒーがやってくると、二人で色々なことを話した。
記憶がなくなってから1ヶ月。まだまだ、忘れていることも多い。
「趣味は料理と裁縫。そのマフラーだって、私が作ってあげたやつだよ」
「えっ、そうなんですか⁉すみません、市販のものだとばかり・・・・・・大事に使わせていただきます」
「ふふ、嬉しいな。市販品だって。それって、お店に売られてる商品と同じくらい、上手に出来てるってことでしょ?」
「そうですね。何か、最近作ったものとかありますか?」
「うーん、これとか」
「これですか⁉すごいですね、もはやプロじゃないですかこんなの」
沙月の趣味を、披露してもらったり。
「でもね、私、スイーツはよく作るけど、日々の食事はそんなに作らないんだよね。たいてい、スーパーやコンビニの惣菜で済ませちゃう」
「意外ですね・・・・・・沙月さんって手先が器用ですから、てっきり全部自分で作ってるものだと」
「包丁苦手なんだよね。昔、子供の頃にニンジンを切ろうとして、ざっくりやっちゃって。おかげで、ニンジンも嫌いになっちゃって」
「ああ、僕も嫌いですよニンジン。前に太一にそのことを言ったら、子供だって言われちゃって」
「ああ、あのちょっと老け気味なナンパくん?」
苦手なもので、意気投合したり。
「だって、初対面でナンパされたんだもの。こんな寂しい男なんてフッちゃってさ、って何様のつもりよ」
「まあまあ、女好きではありますけど、悪いやつじゃないですから。あと、老け気味は言いすぎというか・・・・・・」
「えー、だって全然しわしわじゃない。ピチピチ感がないし。そもそも、口説き方がおじさん臭い。まあ、昂輝くんが私のために怒ってくれたからよかったけど」
岩本太一という人間について、話したり。
二人の間の溝を、少しずつ埋めていく。
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