一章:待ち合わせ

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 二人で並んで歩きながら、色々なことを話した。  もう退院してからずいぶん日数が経っているものの、それでも互いの間には僅かな溝がある。  その浅い溝を少しずつ埋めていくように、言葉を交わす。 「昂輝ってば、前は私にべったりだったのよ。いつもついてくるし、そばにいないと不安だって家まで上がり込もうとするし」 「そうだったんですか?っていうかそれ、ほぼストーカーじゃないですかそれ。前の僕、女々しい上に粘着質だな」 「別に、私は今の昂輝も好きよ。それに今だって、全然男らしさがないもの」 「え、本当ですか」  ──そうしないと、二人の間の何かが切れてしまうような気がするから。 「そういえば私、本屋に寄ったらちょっと編み物系統の棚に行きたいな。でも、昂輝ってそういうの興味ないよね。別行動のほうがいいかも」 「そ、そうでしょうか・・・・・・興味ないことも、なくもないですよ」 「ふふ、無理しなくても平気よ。すぐ終わるから」  他愛のない会話を弾ませ、二人は歩いていく。
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