6人が本棚に入れています
本棚に追加
二人で並んで歩きながら、色々なことを話した。
もう退院してからずいぶん日数が経っているものの、それでも互いの間には僅かな溝がある。
その浅い溝を少しずつ埋めていくように、言葉を交わす。
「昂輝ってば、前は私にべったりだったのよ。いつもついてくるし、そばにいないと不安だって家まで上がり込もうとするし」
「そうだったんですか?っていうかそれ、ほぼストーカーじゃないですかそれ。前の僕、女々しい上に粘着質だな」
「別に、私は今の昂輝も好きよ。それに今だって、全然男らしさがないもの」
「え、本当ですか」
──そうしないと、二人の間の何かが切れてしまうような気がするから。
「そういえば私、本屋に寄ったらちょっと編み物系統の棚に行きたいな。でも、昂輝ってそういうの興味ないよね。別行動のほうがいいかも」
「そ、そうでしょうか・・・・・・興味ないことも、なくもないですよ」
「ふふ、無理しなくても平気よ。すぐ終わるから」
他愛のない会話を弾ませ、二人は歩いていく。
最初のコメントを投稿しよう!