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自動ドアが開き、暖気が体を包む。
「はー、あったかい・・・・・・」
口元を緩めながら、昂輝は間延びした声を出す。隣の沙月も、ほんとだね、そう言って笑った。
店内には、人はほとんどいない。寒いせいか、わざわざ外出をしようとも思わないのだろう。
近々また会わないか、と沙月からLINEが来たとき、どうして今日を指定してしまったのだろう。
少しばかり後悔を胸に抱えながら、昂輝は沙月とともに空いた通路に歩を進めた。
「ここは雑誌のコーナーですね」
「小説とか見る?だったらもう少し奥だと思うけど」
「そうですね。文庫本とか気になります」
同じ色の背表紙がずらりと並んだ棚の前に着く。沙月の提案通り、一旦別れてまた後で合流することになった。
「あ、このシリーズ・・・・・・僕が入院してる間に新作発売されたのか」
馴染みのシリーズを手にとり、ぱらぱらとめくる。
ふむ、面白そうな導入だ。
立ち読みを始めると止まらない。時間がどんどん過ぎていく。
すっかり集中していた──背後の足音に、気づかないくらいには。
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