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しばらく歩き、ようやくいつものカフェにたどり着いた。退院してから二人で会うたびに、よく訪れる場所だ。
ここのカフェのことも覚えていない昂輝にとっても、ずいぶん見慣れてきた。
ドアベルを鳴らして入店すると、顔なじみの店員が、慣れた様子で奥の席に案内した。
「よお、昂輝。久しぶりじゃん」
聞き慣れた声に昂輝が振り向くと、二人が座った席にほど近いカウンターには、にやにやと笑う友人がいた。
「太一、お前・・・・・・こういうところに来るようなキャラじゃないだろ」
よく同じ講義を受けている大学の友人にそのように呆れて見せれば、彼は意地悪そうににたにたと笑った。
「昂輝、知り合い?」
向かいの席に腰掛けていた沙月が身を乗り出し、尋ねてくる。
「はい、そうです。同じ学部で、よくつるんだりしていまして」
そう答えると、途端に太一が目を輝かせ、沙月を凝視した。
しまった、こいつは女好きだった。昂輝は、次に起こるであろうことを予測し、沙月に太一を紹介したことを後悔した。
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