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月明かりが照らす病室の中。
二度目の見舞いに来た沙月は、前回とは打って変わって、すっかり落ち着いていた。
もうずいぶん長い間、ここにいる。しかし、昂輝の容態がずいぶんいいこともあって、看護師も沙月を帰らせようとはしなかった。
もちろん、それ以外の配慮もあったのだろうが。
「ねえ、昂輝──」
入院着の裾を掴み、沙月は上目遣いで尋ねてきた。
「私のこと、嫌い?」
「・・・・・・そんなことはない、ですよ。僕にとっては、今初めてあった初対面の人のような感覚ですが。一緒にいたら楽しそうだとは思います」
それを聞いた途端、彼女は顔を上げ、心底嬉しそうに笑った。笑顔が眩しい、そう感じた。
「じゃあ、まずはお友達から?」
「そうですね。そのほうが、僕もラクです」
こうして、昂輝は、忘れてしまった彼女の手を再びとった。
かつて、自分の恋人だったという沙月の手を。
──自分を殺そうとしている、彼女のことを。
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