三年越しの呪い

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☆ 「……は?」  一弘は、今まで陣内を何度も驚かせてきたが、こんなに驚いてる顔を見たのは初めてだった。少しだけ意地悪な余韻に浸った後、親友に説明した。 「お前中三の頃さ、窓から落ちた生徒助けたろ。助けたんだよ、お前は覚えてないだろうけどさ」 「……あ」  陣内の一番古い記憶は、知らない女子を抱きしめて校庭に倒れてる自分と、やたら慌てて駆け寄る人たちだ。それ以前のことは記憶にない。  後で聞いた話だと、上の階の窓から落ちた女子を空中で受け止めて三角飛びして校庭に降りたらしい。陣内本人も、そんなバカなと思う。 「そういやその後しばらく、今みたいな感じだったわ。ぼーっとしてやたら転ぶし、道に迷うしもの落とすし、天然発言連発してた。記憶ないせいだと思ってたけど、あれ素のお前だったんだな」  気がついたら元の陣内に戻ってはいた。昔の記憶は戻ってないらしいが、日記やらなんやら全部読み返して履歴を覚えなおした、と、後で聞いた。 「けど、ラクトは」 「変わりないって言ってんだろ? つまり、家では普通にドジっ子全開だったってことじゃね?」 「……嘘だろ……」 「いいじゃん。俺、なんかホッとしたよ」  顔を赤くしたり青くしたりしている陣内に、一弘は笑って応えた。 「お前、家のこと大変だったのに、俺も困ったらお前に頼ってばっかだしさ……お前も面倒がりはするけど、いつも助けてくれただろ。ありがたいけど、ずっと面倒かけ通しで悪いって思ってた。  けど、今はそうやって気ぃ抜いてられんだな。ホントよかったよ」  そして、昔と変わらない楽しそうな顔で。  陣内が、どうしようもなく好きな表情で。 「頭いいお前も面白いけど、気ぃ抜いたお前も最高に面白いぜ。もっと見せろよ」 「……あー……」  陣内は、思い出した。  三年前、同じことを言った人物のことを。
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