11月

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「結婚結婚って、焦る気持ちも分かるけど。別に結婚が全てでも無いだろ」 墓場って言うし、金がかかることばかりだ。 昔の考えと今の考えはだいぶ違ってきている。 女性が社会に立つように、女が家に大人しく留まることのほうが少ないくらいだ。 それぞれがそれぞれの幸せを手にすればいいんじゃないかと、俺は思う。 「世の中にはしたくてもできない人間だっているだろうし」 「…それ、誰?」 「いや、誰ってか、たとえば…病気の人とか?」 静かな空気が流れたのは、決して由香が納得したわけではない。 むしろ逆で、俺の話などまともに聞いていないということ。 「病気~?あ、じゃあ刑務所に入ってる人とかも?」 「…まあ」 「それは自業自得でしょ。罪人なんだから、罪を償わなくちゃ」 極端なんだ、由香は。 俺の例えも見当違いだったのかもしれないが、なんかもう、話すことすら面倒になってきた。 「泰輔はさ、男だからそんなことが言えるんだよ」 ここで性別を出してくるのは卑怯だ。 男だから、女だから。だったら男女平等を掲げているのはなぜだ。 そしてそれは、ほとんど女が言っていること。 俺はもしかすると女という生き物が嫌いなのかもしれない。 ほんと都合がいい奴らだ───と、常々思ってしまうから。
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