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「前のやつは充電されなくなっちまってな、買い替えた」
「え、松原さんひとりで?」
「そうさ。前と同じの、よく分かんねえから全部やってもらった」
6万くらいかかった───と笑いながら言う爺さんに、俺は大きく反応してしまいそうになった。
それってバッテリー交換だけすればいいんじゃないのか。
6万って、新規契約だとしてもそれは無い。
スマートフォンでもそんなにかからないというのに、ましてやガラケーだ。
それで6万って…。
(完全にぼったくられてる…)
ここが心配なのだ。
田舎にひとりで暮らす老人というのは、世の中の汚さにいちばん最初に騙される存在だと俺は思う。
そして彼の危険なところは、危機感が薄く、誰に対してもお金の話をしてしまうこと。
やれ年金がどれくらいは入っただ、やれ娘に仕送っただ、親戚にあげただ、そういった話を武勇伝のように話してしまうのだから、俺は本当にヒヤヒヤする。
いつか空き巣にでも入られるんじゃないか、独り身の老人宅なのだから。
そういう意味でも、やはり誰か身内がそばに居てやって欲しいんだけどなあ。
「松原さん、それ騙されてるよ」
「なにがだ」
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