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「あー、おかえり~」
「…由香?また来たのかよ」
「またって何よー。収穫の手伝いしたんだけど?」
「そりゃどうも。だとしてもタダじゃないぞ、それ」
この地の特産物であるリンゴをしゃくしゃくと食べる幼なじみ。
ここは俺の実家だと言ったところで聞きやしないのと、由香も独り身だからか、俺の両親たちは皆して彼女に優しくする。
いずれ嫁に迎え入れる気でいるんだろう。
俺は幼なじみ以上に見ることは無理だろうと確信しているため、そんな気は起きる気配すらないのだが。
「仕事、慣れたか?」
「ん~、まあ普通だよ。フォーマットがあるから、その通りにやってればいいだけ」
由香は隣町の大学へ行って、そこで一度は就職したが数年前に戻ってきては、こっちでも何度も職を変えている。
今はようやく携帯ショップで落ち着いたみたいなのだが、こうしていると幼なじみというよりは兄妹のような感覚だ。
保育園から一緒だからこそ、これはもう染み付いた慣れというもの。
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