11月

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「ねえ、あたしと結婚したいと思える?」 「……なんかあったのか」 あったんだろう、あったからヤケクソになりながら聞いてくるんだ。 正直、こういう絡みをしてくる幼なじみは苦痛でしかない。 だから由香が欲しがっている言葉を与えてやればいいのだけど、質問が質問なだけに適当に「うん」と言ってしまった結果、「あのとき言ってくれたんだから責任とってよね…!」なんていつか言われるんじゃないかと想像したら、適当はやめておこうと決めた。 「わりと高校のときもモテてたし、魅力ないってことは無いと思うけど」 「ほんと?」 「ああ。貴教(たかのり)だってお前のこと好きだったし」 「じゃあどうしてイイねが15個しか来ないのよ!?」 「……なんのことだよ」 勢いよく取り出されたスマートフォンの画面。 そこには盛りに盛ったであろう自撮り写真と、同じくらい誇張された内容のプロフィール。 今では“マッチングアプリ”なんてそれっぽく言われているが、俺からしてみれば出会い系との違いが分からない。 という、つまらない性格が、3年付き合った元カノに振られた理由だったか。
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