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誰に、許されないんだ。
あなた自身があなたを許せないだけなんじゃないのか。
許されないことが、イコールであなたの生きていい理由になっているだけなんじゃないのか。
だったら俺が許します。
俺が許すから、いつか責められるのは俺だ。
「とき…さ……っ、」
強引にも奪ってしまえば、優しいあなたはそれでも必死に応えようとしてくれる。
せめてもと、答えられるものは答えてくれてしまうんだ。
(そういうひとだったな、いつも)
俺にとってあなたは、何にも例えることができない女性だった。
日陰のコンクリートに咲く花か、今にも溶けては落ちてきそうな氷柱か。
いや違う、1度でも目を離した隙に見失ってしまいそうな星かもしれない。
どれも当てはまって、どれもしっくりこない例えを言えば「そんな人間ではないです」と、すぐにでも断ってしまうような、とても美しいひと。
そんな人間なんです。
あなたは俺にとって、それほどの人間なんですよ。
“私は人を殺したんです。殺してはいけない人を、殺したんです”
このとき俺は思った。
いつも“自分は生きていてはいけない人間だ”と言いながら、どんなものにも執着したがらない彼女は。
常に光の当たらない暗闇で十分だと笑ってしまう彼女は。
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