11月

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「女は年齢があるんだよ?子供だって産めなくなるし、周りの目だってあるし、そーいうのぜんっぜん分かってない!」 「……悪い」 ここで何か言ったほうが厄介なことになると悟った俺は、言葉だけでも謝っておく。 「じゃあ、あたしと付き合って」 「………」 「嫌なの?」 ああ、やっぱり嫌いなんだ。 俺は女という存在が。 だから結婚にも乗り気にはなれないし、いちいち言ってくる親から離れたいがために一人暮らしを考えた。 由香が焦る気持ちも分からないことはない。 俺たちも今年で30だ。 この町に残った同級生たちは結婚している奴らがほとんどで、顔を会わせるたびに「お前らはいつ結婚するんだよ?」なんてからかってくる。 きっと由香は、どこかに最終的には俺がいるという期待をずっと胸に置いていたのかもしれない。 「俺は由香のことは――――……、」 アルコールが広がるなかに、ふわっと花のような匂いが混じる。 その柔らかさは確かに女のもので、キスを交わしたのは俺だって数年ぶり。 できればずっと幼なじみで居たかった。 それ以上の関係には由香とだけはなりたくなかった。 理性を切られたように、たったのキスだけで乱された欲は、そのまま女の腕を引いて車内のシートへ押し倒す───という妄想は、やはり考えるだけで呑んですらいないアルコールの酔いすら醒ましてくる。
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