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「餅もあるぞ」
「はは、もう買ったの?詰まらせないようにしなきゃだよ」
「わかっとる」
こうして上がるたびに孫を見つめるように食べ物を次から次に差し出してくるものだから。
この田舎町の小さな家電用品店の息子として働く俺、土岐 泰輔は、松原さん宅へ向かう日は昼飯を抜いているくらいだった。
まあ満更でもなく、祖父の家に行く気持ちでリラックスしているのも俺なのだが。
「えーっと、たしか水が出ないんだっけ」
「そうさ。ボタンを押しても押しても出なくて困ったものだ」
先週買い換えたばかりの洗濯機。
これも俺が仲介して購入してもらったものだ。
都会では家電エンジニア、なんて格好良く呼ばれる仕事なのだろうが、こんな田舎町で俺を利用してくれる人間は足腰が悪かったり、介護を必要としている老人だけ。
ただの修理屋、点検屋、そんなところだろう。
といっても松原さんほどの活気ある爺さんが利用してくれるのは、うちとは親の代からお世話になっている常連だからという理由と、数年前に免許を返納したことで車が無いから。
ただそれだけ。
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