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エピローグ
ある日、営業で外回りをしていると袖を引かれた気が振り向いた。するとそこに小学校高学年ぐらいの女の子が立っている。あ、と声が出た。記憶の中の磯田そっくりだったから。少女はニタリ、と嗤い踵を返し走り去る。思わず追いかけようとして足を止めた。このまま彼女の後をついて行ったら見てしまう気がしたから。壁に蔦這うあの洋館を。扉から顔を出す奇妙な女を。そして今度こそ腕を掴まれあの屋敷に引きずり込まれてしまう。そうなったら……一体どうなってしまうのだろうか。
――私と母さん、人間じゃないの。
不意に彼女の言葉が蘇る。僕はため息をつき小さくなっていく少女の背中を見送った。
了
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