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還るべき場所
──海が、見える。
灰色の砂浜に海が見える。水平線の彼方には何もなく、静かなさざ波が聞こえるだけ。
ここには誰もいない。何もない。その中にあってただ独り、自分だけがいる。
目を閉じて音色にだけ耳を澄ませる。次第に自分自身さえ溶けてなくなっていく。
全てがなくなっていく感覚。これこそが至福のとき。安らぎを得るための唯一の方法。
この場所こそが誰もがたどり着くべき到達地点。最後の安寧の場所。
全ての命が──還るべきところ。
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