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つまりハートの実を食べた羊の毛糸で編まれた手袋をはめたら…
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ーーあぁ~、あか~ん!転ける…!
ーーあの女性転ける!僕間に合う!?
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「間に合えーっ!」
と、叫んでダッシュで転びそうな女性に掛け寄って両手を広げて体勢を低くして受け止める。
ーー間に合った!?
と思った時には女性を受け止め抱き締めて、スライディングっぽくなっていた。
『……あっ、あれっ?痛く…ない…?』
「……ま、間に合った…?あたたたた…。」
『だ、大丈夫ですかーっ!』
「うん。多分大丈夫…。あっ、あなたは、どう?大丈夫?」
『はい!受け止めてくれはったから何ともないです。ありがとうございます!』
女性が僕の腕の中から出ようとしたので腕の力を緩める。腕の中から抜け出して、地面に手をつきながらゆっくり立ち上がった女性。それを見届けて、ゆっくり身体をお越そうと両肘を地面につけようとしたら痛みが走って一瞬動きが止まる。
「あ痛っ!」
と、声にならない声で言う。でも女性に気づかれない様に、何事もなかった様に、そのまま膝を立てて四つん這いになり両手を着いて立ち上がる。そして汚れたダッフルコートやズボンを軽くたたく。
『あっ…。手袋(グローブ)の甲のところが破けてます。きっと助けてくれはった時に地面で擦ってしまったんですね…。本当にごめんなさい。』
と言って、深いお辞儀をする女性。
「へっ?」
女性に言われて両方のグローブの甲のところを見ると確かに破れていた。そのおかげでその下にある皮膚は、なんともなかった。
「あぁ、ホンマや。破れてますね。でも皮膚は何ともないから気にしないで下さいね。」
女性を見ると、グローブが破れてしまった事に凄く責任を感じてる様子で…どうしたらいいやろ…?
『あ、あの…』
「お気持ちだけで。」
『えっ…?』
「いや、あの、これ、頂いたもので…だから、お気持ちだけで!」
『いや、でも…。』
「お気持ちだけで!」
『うーん…わ、分かりました。あの、そしたら両手…あっ、両手出して頂戴のポーズしてもらえますか?』
「両手出して、頂戴のポーズって………こうですか?」
言われた通りしてみる。
『あっ、そうそう!そうです、そうです!ちょっと待って下さいネ。』
と、言って女性は肩から掛けているカバンのチャックを開けて、中をごそごそして何かを見つけた。
『あった!』
カバンの中から何かを取り出して、頂戴のポーズをしている僕の手の中に何かを置いた。そして、僕の両手を女性の両手で覆い包み込まれた。
「これ、気持ちです!手袋の代わりには全然なりませんがごめんなさい。…小袋に入った飴ちゃんです。小腹がすいた時…」
その時、女性のはめているミトンがぼわーっと輝き、少しずつ熱を持ち始めた。女性も何が起き出したのか分からない様子でビックリして固まっている。僕もどうしていいか分からず固まる。そうこうしている間にも女性のミトンが更に輝く。輝きが増す毎に僕と女性の両手も何かの強い力で包み込まれていく。
不思議な輝きは、全然眩しくない。ちなみにミトンの熱(?)はその後上がらず…。
輝き出してから2~3分?でミトンの輝きが一瞬でおさまった。それと同時に僕と女性の両手も何かの強い力がなくなって、どちらからともなく手を離す。
急に我に返って僕は回りを見渡す。女性もつられたのか?きょろきょろする。
「回りの時間が止まってる?」
『人・車・動物・時計が止まってる?』
「……時計!」
僕は慌てて腕時計を見る。
「7時45分や。」
『駅のロータリーの時計も7時45分です。あっ、私のスマホ…。』
女性がカバンの中をごそごそしてスマホを取り出す。
『あっ、7時45分!』
「って言うことは、僕らしか時間流れてない?」
『そう言うことになります…か?』
「えっ?どう言うこと?」
僕は頭を抱える。両手で髪の毛をくしゃくしゃにする。
『あっ!手袋!直ってます!』
「へっ?」
頭から両手を目の前に持ってきてグローブの甲を見る。
「えっ?何で?直ってる…。何で?」
『直ってるでしょ?何ででしょうね…。あっ!あの飴チャンの入った小袋どこ行ったんやろ?』
「あっ、そう言うたら失くなってる。」
『まぁ、飴チャンの小袋は別の機会にするとして、手袋直ったんって、あの不思議な輝きと熱のおかげなんでしょうね。』
「うん。そうやろね。あれしか考えられへん。まぁ、直って良かった!」
『ホンマです。私も安心しました。』
「お互い良かった…あの…僕いつもはこんなん違うんやけど、あの、初めて会ってなんかあなたの事気になるって言うか…。あっ、いや、ナンパと違います…いや、あ、ナンパみたいになってるか…。」
『あ、あの、私も何か、あなたの事気になるって言うか…助けてもらったからって言うのとはまた違って、もっと前から知っている感じがして…今、初めて会ったのに…。』
「あの…お互い気になってるんやったら、連絡先交換しいひん?」
『あっ!しましょっか!』
お互いスマホを出して連絡先を交換していると、回りで何かが動く気配がした。きょろきょろ見渡すと、人・車・動物・時計…全てが動いていた。
「あっ、もとに戻ってる。」
女性がスマホを見る。
『7時46分になってます!』
お互い笑顔になる。
「僕、田中です。」
『あっ、私…あの、中田です。』
「田中に中田って…。」
『何かすごい。』
またお互い笑顔になる。
『助けて頂いて本当にありがとうございました。じゃ、また!』
「いいえ。間に合って良かった!では、また!」
それから2人は改札を通ってそれぞれ利用しているホームへ向かった。
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