怪盗イーグルは見逃さない

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――新しい倉庫は、入口が一つだけ。入口以外は全て鉄筋コンクリートで固められていて、物理的に破壊して入るのは至難の技。というか、壊している最中に警報が作動して警官隊が駆け付けることになっている。なんなら、罠も作動してそのまま身動きが取れなくなる可能性が、高い。  その上で、入口は常に警官三人がかりで見張るのである。どう見ても、隙なんかない。ないはずなのだが。 ――何かを見落としている?このもやもやは、なんだ……?  そして、事件当日。  怪盗イーグルは、見事犯行を成し遂げてしまった。屋敷の庭に、赤マント姿で現れたイーグルの手には、既にギアスの涙が握られていたのである。まさか、と思って新しい倉庫に保管していたブレスレットを調べてみたら、精巧に作られた偽物だったと判明。 ――ど、どどど、どういうことだ……!?  怪盗は、壁を壊すことも、鍵をこじ開けた形跡もなく、さらにセンサーにも引っかからず宝石を盗んですり替えて見せたのだ。  一体、どのようにして犯行を行ったのか? 「あ、ああああ……!」  種明かしは、こうだった。  精巧に作られた偽物――は、専門の鑑定士でもなければ見分けがつかない。ようは、素人が見ただけで見分けられるようなものではなかったのである。  怪盗イーグルが予告状を出した理由は、まさに橋本警部の予想通り、陽動作戦だった。  宝石はとっくの昔にすり替えられていたのだ。作業員に化けた怪盗イーグルが、新しい倉庫に宝石を移す際にしれっと本物と偽物を入れ替えたわけである。  警察はずっと、大事に大事に偽物のブレスレットを守っていたというわけだ。  そして当日、さも今日盗みましたと言わんばかりに本物を持って参上し、警察から逃げるというパフォーマンスをしてみせたというわけである。 「だ、騙されたぁ……!」  橋本警部はかなり後になって気が付いたが、既に時遅し。  怪盗イーグルは、今日も日本のどこかで高笑いを続けている。
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