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一時間半という時間がこれほど長く感じたのは初めてかもしれない。
チャーコはヌコリンの小屋の前でじっと正座したまま、スマホが着信音を鳴らすのを待っていた。
そして。
こーぶた♪ たーぬき♪ きーつね♪ ねーこ♪ にゃんにゃん♪
「着信音きたプギ! もちもちあたちチャーコ!」
『こんにちは~。私、すもーがはら市の……』
「ヌコリンは? どうだったプギ!?」
キチンとごあいさつすらできない無礼なチャーコ。にもかかわらずそのオバちゃん民生委員さんは優しく対応してくれた。
『それがねぇ、弟さんは玄関まで出てきてくれて元気そうよ? いま掃除機かけてたんですって』
(えっ? じゃあ……)
『ただ私、中にまでは入ってないからお兄さんの姿は確認できないわ。でもいれば出てくるでしょうし。お仕事に行ってるんじゃない?』
その状況なら特に何かがあったわけではなさそう。いつも通りの日常……なのに連絡がないのはなぜ?
『でもチャーコちゃん、ええと……その。この弟さんって』
オバちゃん民生委員さんが言葉を濁す。
弟クンはお母さんのお腹の中に少しだけ〝丈夫さ”とか〝考える力”を置いてきちゃった猫。
だからヌコリンはずっとずっとこの仔に寄り添って生きてきたのだ。
「うん。でもこっちが言うことはだいたいわかるはずプギ」
『ええ、それはそうなんだけど、お兄さんの事を聞いても今一つ埒が明かなくて。……え? あらあらそうなの? いいわねー。……弟さん、冷蔵庫にある中華丼をレンチンして食べたって言ってるわ』
「中華丼?」
それはきっとヌコリンが作って保存しておいたものだろう。
となると、やっぱりいつも通り彼は弟に食事を用意し、仕事に行った……?
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