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『んー……よし。チャーコちゃん、やっぱり私、中にお邪魔してみるわ。このまま電話切らないで待ってて』
「プギ?」
それってイイの? 大丈夫?
とはいえ、そうしてもらえるのは正直有り難い。
〝はいはい、ちょっとごめんなさいねー……おじゃましますよー”
通話口の向こうでオバ民さんの声がそう言ったきり、しばらくは何も聞こえてこなかった。
ドキドキ、ドキドキ、不安からくる心臓の音がチャーコの耳にまで響いてくる。
『チャーコちゃん? やっぱりお兄さんいないわよ。お部屋もきれいに片付いててね、お布団は敷きっぱなしだけど慌てて起きて出かけたって感じ』
チャーコの口から大きな安堵がプヒーっと漏れた。
やっぱりなんでもなかったんだ。ただこっちに連絡するのをコロッと忘れてるだけで。
『もし具合が悪くて救急車で運ばれたとかなら、もっとバタバタした形跡があると思うし……え、なに?』
突然おば民さんが会話を中断した。
〝え? なに? 救急車は来たの!?”
「……ッ!」
通話口の向こうで話してる声が微かに聞こえてくる。
〝それで? うんうん、お兄さんがそれに乗ったのね? どこへ? 病院わかる!?”
「ヌ……ヌコリン……」
カタカタ、震えるチャーコのひづめがスマホを揺らす。やっぱりケイの嫌な予感は当たってた。
(ヌコリン……具合悪くなって救急車呼んだんだ!)
身一つで病院に運ばれて、スマホが手元にないから連絡できないんだ。いや、もしかしたらそれどころか。
(まだ意識が戻らないから連絡ができない……?)
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