足湯の猫は雷のヒゲ

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 実桜が何気なく言った言葉に、萌は苦笑いした。 「五歳下でね。すごくわがままで困ってる」  実桜の目には、照明が落ちる直前の萌の顔が暗く悲しげに写った。  静かな音楽と共に映画が始まった。  上昇志向の強い父親と友人が多くボランティア活動に熱心な母親、真面目で努力家の一般企業に勤める姉、大学三年の世渡り上手な弟の、どこにでもいそうな四人家族の日常が映し出された。他人の弱みやコネを使ってでも、自分の地位を上げたがる父親に嫌悪する姉と、同じ手を使おうとする弟はいつも衝突ばかりだった。仲裁役であるはずの母親は、いつも肝心な場面で他人の世話を焼いてばかりで、家族の問題には向き合おうとしない。
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