メロスの妹

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 高校に入学して、私には彼氏ができた。SNSで出会った、憧れの年上の彼氏だ。彼は私に、しきりにこう言っていた。 「学校なんてやめてさ、俺と一緒に暮らそうよ」  (すさ)んでいた私はその言葉に、その誘いに、ついつい乗ってしまおうとする。 「学校の勉強なんてさ、大人になったら使わないから」  彼はそう言って、私を誘惑した。弱かった私は、彼のその口車に乗ってしまう。  そう、私は家族の誰に相談することもなく、勝手に高校を中退したのだ。そしてその足ですぐに彼氏の元へと急いだ。  身体が自由になった気がした。  これで私を縛るものは何もないと感じられた。私を縛っていた学校や社会、ルールから解放してくれる彼は、私にとって救世主以外の何者でもなかったのだ。  それから数日、私は彼との生活を(おう)()した。鳴り響くスマートフォンの着信を見て見ぬ振りをし、自堕落に彼と過ごす。  もう私を【メロスの妹】と呼ぶ者はいなかった。  スマートフォンの充電が切れる。  外との連絡手段が絶たれる。  その瞬間、私は少しの不安に襲われた。 「ねぇ、スマホ、充電していい?」  私は彼に問いかける。  彼は自分のスマホをいじりながらこう言った。 「ダメ」 「え?」
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