輪廻Ⅱ『結願』

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「ご迷惑序に鋏を貸していただきたいんです」 「何に使う?」  主は突然現れたおかしな遍路に鋏を渡すわけにはいかない。 「丸刈りにしたいんです」 「それならバリカンがあるわい。いきなり鋏なんて言うけん驚いた。あの方連れまいよ。大したことは出来んがあんた丸刈りにするまでお接待させまいよ」  牧田は隆敏を負んぶして接待小屋まで連れて行った。 「おーい、おーい」  奥から野良着の夫人が出て来た。 「ようおまいり」  夫人が笑顔で迎えた。主が事情を話し夫人がバリカンを掛けた。髪の多い牧田は地肌が青い。 「よかったら白装束にしたらどうや。古着けど洗うてあるんじゃけん」  牧田はシャワーを浴びて厚意に甘えた。接待小屋では隆敏が主に二人の関係を明かしていた。 「そうか、そなん深いご関係やったか。あの方も立派だが、心開いたあんたは素晴らしい。もし、うちが同じ経験したなら、許せるかどうか、恐らく憎み続けるじゃろう」  主は感慨深げに言った。 「お待たせしました」  頭を丸め、洗いざらしの白装束に身を包んだ牧田が現れた。 「ああっ」  主人が思わず手を合わせた。 「奥さんからいただきました。少しは遍路っぽく見えるでしょうか?」 「牧田君、ありがとう」  自然と涙が溢れる。 「いやだな橘さん、さあこうしちゃいられません、夢を叶えてください」  夫人がビニール袋を牧田に手渡した。 「紙袋だと雨降りには破けてしまうけん」  隆敏が手にしている紙袋をビニール袋に入れ、口をしっかり結んだ。隆敏を車椅子に乗せる。夫人が隆敏の膝の上にオレンジを二つ置いた。  
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