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「傘代わりに上で羽を広げてくれ」
癪が巨大化して羽を広げた。隆敏は雨が上がったと勘違いしている。
「これはひどい熱だ」
牧田の額に手を当てて言った。
「ねえ、聞こえる」
牧田は頷いた。
「熱は冷ましてあげるから。その前に寿命を見るからね、天命なら諦めてもらうよ」
男は右手人差し指の腹を牧田の天中に当てた。そして山根までゆっくりと滑らせる。
「あなたは常人ではない、選ばれた人だ」
そう言って掌を額に当てた。牧田の熱が掌に吸い取られる。真っ赤になった掌を天に向けて息を吹きかけた。熱が散らばって消えた。牧田は意識を取り戻した。すぐに隆敏の元に走る。
「大丈夫でしたか、すいませんでした」
「私より君は大丈夫か?うなされていたが」
「はいそれが不思議と治りました」
牧田は焦げ茶色のハンチングを被った男に気付いた。
「あの方は?」
「私達を助けてくれた方です」
牧田が近付いた。
「ありがとうございます。お接待の方でしょうか?」
「まあそんなとこだけど、こういう者です」
男は名詞を差し出した。
「金原武さん、仙人?」
「そうなんですよ。あなたの祈りが私に通じました」
「祈りですか?」
「そうです、あの方の結願を祈られたでしょ?まさか忘れたとは言わせないですよ」
金原は笑った。
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