獣飴と試験

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獣飴と試験

「獣飴?」 「はい、この世界の人間にとっては砂糖よりも甘いものなんです。普通のお菓子に使われる砂糖はとても貴重なものなので、一般的なお菓子にはほとんど使われていませんが、これは他のお菓子と比べても圧倒的に甘みが強いんで、俺達にとっては甘味料代わりですね」 「なるほど」 獣飴を口の中に放り込むと、甘さがじんわり広がっていく。 (やっぱり甘くないとね!) 甘さ控えめの獣飴を食べていると、次第にお腹いっぱいになり、さらに甘さも増してくるようだった。 (甘いのが苦手な方でも大丈夫そう!) ……………。 ………。 …。 …。 「あ、そういえば、獣飴って何か特別な効果があるとかないんですか?」 「えっと……獣飴って言ってますけど、元々は獣そのものの成分ですから、あまり効果は期待できないんじゃないかなー」 「そうですか……」 獣そのものの成分ということは、つまり、獣の力を得られるということだろうか。 しかし、そんな力があるなら、最初から獣の姿で現れたりすればいいのに。 「じゃあ、私もちょっとやってみます!」 「えっ、それはやめてください!」 「何でですか!?」 「獣の姿ではなく人の姿になるなんて、危険すぎますよ!?」 「それは分かってますけど……」 「それに、獣の姿になっているのなら、その姿のままでも、私に獣飴を食べることができるんですよね?」 「うぅーん、どうなんだろう?」 「だって、この世界の人は獣飴を食べると、獣の姿になれるって聞いたことがあるので、もし仮に獣の姿になったとしたら、私にも獣飴をあげられませんし!」 「まぁ、確かにその通りかもしれないけど……」 「そんなの嫌です!」 「えーっ、そんなに嫌なの!?」 「嫌ですよ!」 「そっかー。じゃあ仕方ないなぁ」 「そんなぁ……」 「じゃ、じゃぁ、次の機会にな!」 ………。 ……………。 …。 ………。 「あ、あの!」 「どうしました?」 「この、獣飴って、たくさん入ってるんですか?」 「いや、この量しか入ってませんよ」 「えっ、うそ」 「本当ですから」 「じゃ、じゃあ、今日はこれまでで!」 「う~ん、そう来なくっちゃ」 「もう!」 こうして、獣飴を食べることはできなかったけれど、今日一日で、私は獣飴を食べ続けるという試練を乗り越えることができたのだった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 【獣飴】 饕餮(とうてつ)の実から作られる砂糖の原料である。 獣の姿を模した形をしており、そのまま食べることができる。 味は砂糖の二倍ほど甘い。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ さて、明日はいよいよ大学の試験当日である。 「明日はいよいよ最終日ですね!」 「ああ、そうだな」 「頑張って、合格するんですよー!」 「もちろんだ」 「それじゃ、私は寝ますね!」 「あぁ」 そして、私は今日のうちに買ってきたお布団の上で目を閉じることにした。 そして、翌朝。 「ふぁ~あ」 「おはようございます!」 「ああ、おはよう」 「はい、それでは今日の試験の開始時刻までに、お勉強を始めますね!」 「おう、よろしく頼む」 こうして、私は今日も大学の試験に挑むことになったのであった。
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