ごくありふれたものの話

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結果、【木を隠すなら森の中】と、近くの病院にこっそり彼を連れ込む事になった。 治る見込みのある病人や怪我人は【不具者】とされず、例え見つかってもどちらかにでっち上げてやれば良いとなった。 当の彼にも一応の説明が成されたが、やはり状況をどこまで正確に把握出来たか、彼自身にも誰にも分からない。 しかし苦言を呈する者も罵倒する者もいなかった。 それから数日経ち、彼はある意味その存在を完全に否定され、しかし決して冷遇される事なくそこにいた。 有難い事になおも元気に、それなりに平穏無事で。 慎重に時と場合を選びながらも病院での仕事、更に少しずつ周囲の信頼と友愛をも得ていた。 彼を淘汰するべきであるという声は一切聞かれなかったし、それを望む者はいなかった。 彼は辿々しくも新たに仕事を覚え、褒められる事、礼を言われる事を覚えた。 挨拶や笑顔を覚え、会う者とそれらを交わす事を覚えた。 代わりに言い表す事こそ無かったが確かにずっと覚えていた寂しさを忘れ、自分が【不具者】とされた事も忘れた。 それがいけなかった。 .
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