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ふと手錠付きの方の手指で拭ったままのドロリッチが目に入り、思うままそれを口に含んだ。
血迷ったかと思われても否定する材料は無く、オッサンもオッサンで当然そんな事をしてくれる余裕なんざ無く、慎重に喉から声をひり出した。
「オッサン、息吸うより吐けよ。幾らか楽になるから」
やっぱり大した反応は無く、細く浅い息遣いも変わらない。
そうこうしてる内に孔の中に大物らしき手応えを感じ、 これさえ何とかすれば多分クリアらしいと踏む。
100%には程遠くとも残数の分からん時間制限や何やを設けられながらここまでやったなら、やっぱりちょっとくらい褒められても良いだろう。
もしくはこっそり思うまま、ただし許されるだけの報酬をぶん取っても。
しかも早くしないとこの人まだ死ぬかも知れないし、そうでなくとも呼吸は何とかしてやりたい。
今度は手足を押さえるのは止めにして、全体重を掛けつつ両脚に力を込める。
ドロリッチまみれの包帯は案外すんなり外れ、指で唇を押して覗き込んで確認する限り、指や舌噛んでさあ大変となりそうも無い。
もう一度慎重に耳元に息を吹き込む。
「大丈夫だよ、アロンソア。落ち着きな」
眼孔から聞こえて来るべきじゃない音をBGMに、耳元から頬を経由して顎を辿り、指で押したきり開いたままの隙間に唇で触れる。
そんなつもりは無かったがガンガン歯や舌が当たるが互いにそんな事気にもせず、最早落ち着くもクソも無くそれを繰り返す。
──あ、糸引いた。
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