腎臓と星

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しばしば予想されるような銃撃戦やカーチェイスが繰り広げられる事はなく、それについては上手く面倒を被らずに済んだと言える。 更に目先の不利益をなかなか冷静に判断出来る、五体満足な運転手に当たった事もか。 やはり後悔はしなくても良いかも知れない。 ただしこの運転手、存外に喧しい。 この時までに百面相どころではないほど目まぐるしく顔色や表情が変わっている。 やはり後悔すべきか否か、実を言えばこれは最後まで決めかねる事となった。 「お客さんあのね、大抵の【運転手】って物事の判断はちゃんとするし五体満足だよ?──てか多分絶対タクシーと間違えてるでしょ?お願いそうだと言って。そこのコンビニの駐車場とかで降りて?」 「タクシー運転手とは無事にやり取り出来た試しがないからそもそも選ばない」 「ええ……。怖いから詳細は聞かないどくね。お客さんひょっとして単なる迷子?駅近いし交番まで送ろっか?」 「警察は嫌いだ」 「それは俺も概ねそう。気が合うねえ……」 タクシー運転手と言えば平然と行われるぼったくり、どこか鼻につく態度が気に入らない。 これまでに何人かし、あるいはさせられた。 とにかくそれ以来タクシーには近付かない事を信条としている。 連中にとっての平和に貢献している事を連中は露知らず、この先知る事もないだろう。 とにかく自分は迷子でなければ、然したる目的地がある訳でもない。 .
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