異変

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異変

あらかた準備が整った頃、子供達の賑やかな声が聞こえてきた。 「おはようございま〜す」 子供達は元気いっぱいに挨拶をし、各々の席に着いていく。 全員が席に着いた事を確認すると、ラフィが教壇に立った。 「やぁ!みんなおはよう。今朝も元気いっぱいだね。さて…今日は、惑星について学ぶよ」 ラフィの言葉に子供達は首を傾げる。 「惑星…?」 「何かな?初めて聞く言葉だよ」 ラフィは穏やかな笑顔で、子供達を見回しながら口を開く。 「宇宙には、数えきれない程の惑星がある。その惑星には様々な生き物が生息していたり、僕達天使の姿にそっくりな人類が住んでいたりもするんだ。全ての惑星に生命体がいるとは限らないけどね。惑星で生命が誕生する為には、いくつかの条件があり、それらが揃って初めて誕生するんだ」 子供達は、キラキラと目を輝かせラフィの説明を聞いている。 「それじゃ、代表的な惑星を紹介するよ」 ラフィが百科事典を手に取り、パラパラとページをめくる。 その時、巨木の葉がサワサワと風に揺れ始めた。 私は眉を顰めた。 (この風…違和感がある…) 私は胸騒ぎがした。 風に湿度を感じる。 ジメジメとして、しかも体に張り付くようなねっとりとした風。 このような風は初めてだ。 「ん?風が吹いてきたね…この風、何かおかしい…?」 ラフィも異変を感じているようだ。 ブランカも、怪訝な表情で空を見上げている。 突然、突風が吹き巨木の枝が大きく揺れた。 クルックが乗っているブランコも大きく揺れている。 「クルック!大丈夫か?」 私はクルックに駆け寄った。 「私は大丈夫です!今の風はなんですの?」 「私にも分からない…しかし、胸騒ぎがする。クルック、ブランコから降りて私の腕に巻き付くのだ」 「分かりましたわ」 クルックが腕に巻き付くのを確認し空を仰ぐ。 しかし、いつもと変わりない青空だ。 風も止んでいる。 私は首を傾げた。 「今の風は一体…」 子供達も不思議そうな面持ちで空を見上げている。 「サビィ、今の風…おかしいと思わないかい?」 「ああ…なぜか胸騒ぎがする…」 「やっぱり…僕も胸がざわついているんだ」 その時、ブランカかが何かに気付いた。 「ねぇ…あれは何かしら?」 ブランカが指差す方に目を向けると、遥か上空に黒いモヤがユラユラと揺れている。 そして、よく見るとモヤは膨張と縮小を繰り返しながら揺れていた。 「あれは…何だ?雲なのか…」 私は、目を凝らして見るがモヤの正体は分からない。 「え!あのモヤ…近付いて来てない?」 私は、ブランカの言葉にハッとした。 そのモヤは、奇妙な動きを繰り返しながら近付いてきている。 「良くない予感がする。子供達を避難させよう!ラフィ、エイミーを呼んでくれ」 「私が、子供達を神殿まで連れて行くわ!エイミーには神殿の所で待っててもらって!」 「分かった!エイミーに連絡する」 ブランカは、急いで子供達を集め神殿に向かおうとした。 その時、一瞬にして空が真っ黒い雲に覆い尽くされた。 「逃がさない…」 どこからともなく、地を這うような不気味な声が響いてくる。 気が付けば辺りは暗く何も見えない。 これでは、神殿まで子供達を連れて行く事は不可能だ。 「とにかく灯りを…」 私は両手のひらを広げ息を吹きかけ、光の球体を作り上空に放つ。 「これでは、光が弱過ぎるな…」 「サビィ、僕に任せて」 ラフィは百科事典をめくり、ページの端をトントンと指で叩いた。 すると、眩い光を放つ炎の球体が飛び出してきた。 「これは太陽だよ。小さいけどね」 太陽が上空に昇り闇を照らす。 「小さいから昼間のように明るくはないけど」 「いや…ラフィ、十分な明るさだ。ラフィはブランカをサポートしてくれ。1人で子供達を連れて行くのは大変だろう」 「了解!」 ラフィは、もう一つ小さな太陽を百科事典から出すと、ブランカと子供達の元へと走っていった。 「さてと…」 ラフィが用意してくれた小さな太陽のおかげで、夕暮れ時ほどの明るさとなっている。 注意深く辺りを見渡すと、2メートルほど先に誰か立っていた。 その不気味な後ろ姿に背筋が寒くなる。 (あの後ろ姿…まさか…) 見覚えのあるその姿に、私は嫌な予感が的中したと確信したのだった。
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