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炎に包まれるセレンツリー
「そんな…嘘でしょ…」
ブランカが呆然とセレンツリーの林を見つめる。
「………」
ラフィと私も驚きから声が出ない。
セレンツリーの林に雷が落ち、林は炎に包まれていた。
皆で造ったツリーハウスも燃えている。
「とにかく火を消さないと!」
ブランカの声にラフィと私は我に返った。
「そうだ!3人で協力して消そう」
私の言葉に2人が頷く。
私達は林を前にして並んだ。
こうしてる間に、火の勢いはどんどん増していく。
大量の水が、空から滝のように落ちる様をイメージする。
3人のイメージが合致した瞬間、空から大量の水が林に降り注いだ。
(水よ、この火を消火してくれ!セレンツリー…どうか無事であってくれ…)
私達は、セレンツリーの無事を心から祈った。
大量の水と私達の祈りも相まって、数分後には鎮火した。
しかし、セレンツリーの林は見る影もなかった。
イルファスが放った雷による業火は、たった数分の間に全てを焼き尽くした。
苗木から育ててたセレンツリーも、ツリーハウスも、全て焼き尽くしてしまった。
あまりの惨状に、私達はガックリと膝をついた。
「全て焼けてしまった…酷いわ…」
俯いたブランカの頬に涙が伝う。
「子供達が、あんなに頑張って部屋作りしたツリーハウスまで…」
膝の上で拳を握るブランカ。
「許せない…私達の事なら我慢はできる。でも、子供達の事となれば話は別よ」
呟きながら、すっくと立ち上がるブランカ。
そして、手の甲で涙で濡れた頬を拭い、顔を上げた。
彼女の瞳には強い決意が見て取れる。
「イルファス!いるんでしょ?姿を現しなさい!」
ブランカが空を見上げ呼び掛けた。
ラフィと私も空を見渡し、イルファスの姿を探した。
「私を呼び付けるとは良い度胸だな」
怒りを含んだ声が辺りに響く。
いつの間にが、腕を組んだイルファスが目の前に立っていた。
「ええ!呼んだわ。セレンツリーの林を焼くなんて…あまりにも酷すぎる。子供達のツリーハウスも全部燃えてしまったわ!」
「ハッ!あんなガキどもの家など、どうでもいい。私の目的はただ一つ。お前を消す事だ!」
ラフィと私はブランカの前に立ち、イルファスから守ろうとした。
しかし、ブランカは私達を押し退け前に出る。
「私は大丈夫よ。ここまでされて黙っていられない」
怒気をはらんだ声でブランカは言った。
「ほお…面白い。ならば勝負しよう」
イルファスが空に舞い上がる。
その後を追おうとするブランカの腕を私は掴んだ。
「ブランカやめるんだ。危険過ぎる。イルファスは、君の命を狙っている」
「危険なのは承知の上よ。このまま放っておいたら、天使の国が滅茶苦茶にされてしまうわ」
「だからと言って君が犠牲になる事はないよ」
ラフィが真剣な表情でブランカに言った。
「私が行く」
私は、空でブランカを待つイルファスを見つめながら言った。
「え!何を言ってるの?サビィ…駄目よ!」
「そうだよ、サビィ。ザキフェル様を待った方が良い」
ブランカとラフィが押し止めようとするが、私は頭を左右に振った。
「ザキフェル様が、いつ来るのか分からない」
「それなら、僕も行くよ」
「いや。ラフィ…君は駄目だ。君に何かあったら、ブランカはどうする」
私の言葉に2人はお互いを見た。
「私は大丈夫だ。何も問題はない。ラフィ…ブランカを頼む」
私は、2人を見つめ空に舞い上がった。
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