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私はさっきの資料を県警本部に預け、本署に戻ると福永代理が鑑識のデスクで私たちが帰ってくるのを待っている様子だった。
「どうだった?」
「ああ、言われたところに言われたモノがある。あとは鑑定結果次第かな」
班長は確信のグッジョブサインを見せると、本部の鑑定官から電話がかかって来た。
「ほら。あとは、ガトーが確保できているかだな」
さっき採取した指紋のヒット通知を聴きながら、私は班長の出した掌を叩いて喜びを示していると、今度は代理の携帯電話が鳴り出した。
「どうだ?」
「代理、班長、やりましたよー」
今度はは外川主任だ。予想通りの展開に私たち一同は安堵の息が漏れ出た。
「代理」
「なんだい?」
「そもそも、何で源さんが『ムーンラビット』に行くと思ったのですか?パチンコ店なんて何軒かあるじゃないですか……」
「おっ、いい質問、それ」
代理は腕組みをほどいて、得意気な顔で私に指を差した。
「あのパチンコ屋だけはな、極端に防犯カメラが少ないんだよ。ホラ、他より設備古いでしょ?」
「へぇ……、すごいです」
普段は各係の班長以下の部下がまとめて上げてくる書類を読んでいる印象があったけど、その傍でしっかり現場のデータはインプットされているのだ。そこはさすがだと思った。
「点が線になる、の意味が分かった?」
「ハイ!」
「どの証拠もつながってるんですね。今回は勉強になりました」
「そうかそうか」
「さぁ、ガトーが源さん連れてくるから出迎えてやろうか、菜那子巡査」
……と言ってるのも束の間。
県警本部から東署
東町駅でチカンを確保
至急現場向え……
「あーあ、また事案じゃないですか……」
「さ、現場行くぞ、早川!」
私たちの仕事は終わりそうでいつも終わらない。
東警察署鑑識係員、早川菜那子巡査の勤務日誌4 おわり
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