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結局私たちは、未明に現れたおそらくウサ耳の源さんの仕業で、泥棒に入られた3件のお家の鑑識作業をハシゴすることとなり、帰ってきた頃には当直の時間は過ぎていて、部屋も通常業務に入っていた。
「はんちょ〜……」
仮眠も取れずに現場から帰ってきた私と外川主任を鑑識係のデスクには、班長だけでなく、何やら資料を持っている福永代理もいた。
「昨日はやられまくったなー。で取れたか足跡?」
「はい……、それだけはなんとか」
私は残った力を振り絞って、現場で採取してきたシートを班長に見せた。前回の現場で見た記憶のあるそれに間違いないと思う。
「やっぱり源さんの仕業のようだな……」
「おそらくーー」
私は現場に向かう直前で源さんかもしれない男性に狭い路地で衝突したことを正直に報告した。でも二人はそれも想定の範囲内のような顔で、私が確保できなかったことを責めることもなく腕組みをしたままうなづいていた。
「まあまあ、そこで確保も難しいよ」
「彼奴が正にその被害品持ってたら別だが……」
出来ることをしなかった時の班長は厳しいけど、この類いのミスには優しい。それと、妙に落ち着いているので、私は無意識に二人の顔色をうかがった。
「何か、分かったんですか?」
「これまでの源さんなら、その金をどうするか考えてたんだ」
代理が言うと班長はニヤリと笑った。
「でよ、源さんの金の使い道が何となく分かったのよ」
現場に出ない人もちゃんと捜査に携わっている。私は代理と班長の同期コンビにしっかり守られて現場に出ていると思うと安心の息が溢れた。
「彼奴はアガリをパチンコにぶっ込むんだよ、人のカネを気持ちよくな。あぁ悪い奴だホント」
「で、私の予想では駅前の『ムーンラビット』にいると思うんだ」
「そうだ、で今朝方の被害はいくらくらいだった?」
「3件で5万くらいです」
「そうか、軍資金としたら充分だな。そして……」
私に向ける班長の目が一瞬厳しくなった。
「夜中に源さんとぶつかって逃げた先、街頭の防犯カメラあったよな?」
「あ、本当だ!」
ポツリと班長が言うと主任も手を叩いた。どうやら以前取り扱った事件で見に行ったらことがあるらしい。さっきの厳しい目は防犯カメラがあることを失念したそれと私は悟った。
「よし、そうと決まればすぐ行こう。ガトーはパチンコ店、鑑識はビデオ。証拠が消されるかも知らんからな」
私は眠いことも忘れて再び出動の道具をまとめたーー。
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