07 翌日、まさかの白紙撤回? いや課長の本心は違うはず…!

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 走って入ってきたのは、同じ課の立脇(たてわき)というベータの男性社員だった。 「兎川(とがわ)もおはよう」  立脇に笑顔でぽんと肩を叩かれ、青生も「おはようございます」と挨拶を返す。  だが頭の中は紫藤の白紙撤回発言でいっぱいだった。  え、どうする?  普通に考えれば、紫藤の意向にそうべきだろう。  そもそも事の発端は自分のヒートだし、それで迷惑をかけているのは完全に自分の方だ。  いや、でも、せっかくA判定かもしれないのに……?  ぐるぐると、常識的な判断と自分の欲が渦を巻く。  「何ぼーっとしてんだよ」と立脇に髪を軽くかき混ぜられ、ははっと作り笑いを返す。  このままエレベータが着いて職場に入れば、この話は終わりになる気がする。  昨日はあんなに、もう一度しないと生涯の汚点になるみたいに言ってたのに、今日になってもういいなんて、なんで――。  操作パネルの前に黙って立っている紫藤の横顔を見る。  紫藤は沈んだ顔をしていた。  それを見て、これと同じような光景を見たことをふっと思い出した。  あの派遣女性の告白を断った後、暗い顔をしていた紫藤。  そんな顔をするぐらいならつき合ってみればよかったのに、なんで断ったのだろう。  ……今回も、同じじゃないか?  エレベータが職場のフロアに着く。  一歩出たところで、青生は言った。
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