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アルファの雄々しいにおいが鼻腔をくすぐり、理性を溶かしていく。
体中の産毛が総毛立った。
「ヒート……!? 兎川、大丈夫か?」
オメガフェロモンのにおいを吸い込み、即気づいたのだろう。
切羽詰まった声をかけてくる紫藤に、青生は反射的に襲いかかっていた。
「え?」
体当たりを食らわされ、足がもつれた紫藤を床に押し倒す。
小柄な青生はすかさずその腹の上にまたがり、マウントを取った。
つかまえたアルファを見下ろす。
相手が上司だという躊躇は、もはや頭にない。
あまりのことに、紫藤は目を丸くしていた。
「ま、待て、落ち着け。き、君、特効薬は? 持っているだろう。どこにある? 取ってくるから」
それが正しい対処なのだが、一時間ヒートしていた青生の頭には、そんな選択肢はもう存在しない。
「そんなの、いらない……」
ほしいのは、そのアルファの体だけだ。
青生は紫藤の右手をつかむと、紫藤のそのきっちりと締められたネクタイを巻きつけた。
「なっ……!?」
ネクタイの大剣と小剣で団子結びにして、紫藤の右手を襟元で縛る。
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