長い手紙

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『親愛なるウー教授へ  あなたがこの手紙を読んでいるということは私はすでに死んでいるということだと思います。まさかこんなことになるのであれば私はもっと注意深くするべきだったととても反省しています。  あなたとのメールのやり取りでも伝えた通りこの街には昔大富豪のエドワード・マシューという人がいました。その人の残した財宝を私の祖先が譲り受けました。そしてそれを相続した父も母も病気で亡くなり私は一人になりました。  財宝の存在は亡くなる直前に知らされましたが、財宝よりもずっと住んでいた家に隠し部屋があったということのほうが大きな驚きでした。  エドワード・マシューから譲り受けた財宝の中にとても高級な装飾が施されたパズルボックスがありました。  六角形をしていて、フットボールくらいの大きさでズッシリとした重さがあります。私は初めてそれを見た時それが箱であることがわかりませんでした。何か分からない六角形の綺麗な置き物だと思っていました。しかし、その置き物は部屋の中でも一番奥の中央チェストの中に厳重に保管され、数あるアンティークの中でも特別な品物であることは明らかでした。  しかしある時、私はその箱を床に落としてしまい、その床に落ちる音を聞いて、中に何かが入っていることに気づきました。  よく見ると箱の装飾に沿って切れ目のような筋があるのを発見しました。この箱はきっと開けることができるのだと思い、町の色々な人にこの箱を開ける方法を聞いて回りました。しかしこれが良くなかったのです。  箱の開け方はわかりませんでした。ただ、その箱が存在し、まだ開けられていないという情報が町に広まってしまいました。この町には田舎町に相応しい古臭いマフィアがいます。しかもそのリーダーのカイエル・マシューはエドワード・マシューの子孫なのです。ずいぶん昔のことですし、この町にはエドワード・マシューとつながりのある人はたくさんいます。それだけ狭苦しく小さな町なのです。  彼は私の家族が財宝を受け継いでいることを知ってに嫉妬心を抱き、奪い取ろうとしているのだそうです。  きっとあなたは私の伯父さん、伯母さんと一緒にこの手紙を読んでいるでしょう。このことはダニエル伯父さんが教えてくれました。先に伯父さんたちに相談するべきでした。ごめんなさい。
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