永遠リフレイン

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永遠リフレイン

灰色の街を眺めながら飲む、ブラックコーヒーは格別に美味い気がする。パソコンの電源を入れ、ニュースサイトをクリックした。 “2043年 自殺率過去最高。犯罪率も大幅増加” トップ記事の見出し。 見飽きた言葉の羅列。 トップ記事にはクリックせずにスクロールした。 朝のコーヒーを飲み終われば仕事が始まる。 白衣を着て地下の研究室に下りた。国から請け負った仕事をするために。 血税が注がれたプロジェクト。地下室に下りたならば、一寸たりとも息を抜くことはできない。 天才発明家の倉山岳人(くらやまがくと)。 世間は自分をそう持てはやした。 自分でも天才だと思っているんじゃないか、だって? 何を基準に“天才”と称されてるかが分からないから、何も思わない。ただ幼い頃からモノを作ることが好きで、自分が世に貢献できることがたまたま今の仕事だっただけだ。 しかし、いまだに解せないことがある。 世の人々の、孤独に対する弱さだった。 岳人は両親がいなかった。赤子の時から養護施設で育ち、高校を卒業したら施設を出た。 その後は国立大学に入学。卒業した後は、国立科学研究センターの、研究員として引き抜かれる。 研究所からそう遠くない場所で中古物件を買い、1人気ままに暮らしていた。 岳人は生まれたときから1人だったが、それを寂しいと思うこともなければ、自分の命を絶とうと思ったこともなかった。 だから今の世の閉塞感を、自分の肌感覚で、完全には理解できないのだ。 20年前、未知の感染症が流行して以降、この国は活気を取り戻せなかった。 昔は人と人とがごく自然に、直に触れ合っていたらしい。フェイスマスクもなしで外を歩き回り、何かイベントがあれば人でごった返し、密集していたという。 そんな社会が消え去って、人と人とが気を遣いながら、距離をとって生活する様式が定着する。 そして慢性的な経済不況、さらにはそんな中で増税を重ねたのがあいまって、自殺率も犯罪率も右肩上がりで膨れ上がった。 岳人は、国の自殺防止対策としての、ロボット開発をしていた。最新のAI技術を駆使し、孤独な人間の心を癒すロボットを作るための、プログラムを組み込んでいた。
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