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3話 俺の家族の殺害宣言
真っ直ぐ、桃季を見つめる冬馬の目。その迫力から真面目な話だと悟った。
「はぁ?殺す?だから、俺そーゆーの信じねぇよ」
「俺だって、冗談でこんな話してるわけじゃねぇ。
ただ、俺は悪魔に身内を殺されたんだ。」
(悪魔=殺人鬼ってことか?冬馬の家族が殺された?)
「父さん、母さん、妹全員殺された。俺が部活してる間にな。」
「殺人?まじか…でもお前が言ってるの悪魔って人だろ?たとえだよな?」
「なわけねぇだろ。信じろよ。人じゃない化け物の悪魔って存在を。魔族をよ。」
聞き慣れない言葉に桃季は眉をしかめた。
「マゾク?」
「あーもう話すか。桃季、お前も同じ目に遭う。」
「??」
「お前以外の家族、父さん、母さん、姉ちゃんが殺される。」
冬馬の鋭い目と意味わからない発言が耳を通った。
「ば、馬鹿言うなよ。何いってんだお前」
「いつかは分からない。もうすぐ狙われそうだから俺はお前のそばにいるんだよ」
「よく分かんねぇけどじゃあなんで俺につくんだよ?普通俺以外の家族をツケんだろ」
「それも意味があってな信じなくてもいい。ただ、こういう事があるって覚えとけ。家族を大切にしろ」
冬馬がスクっと立ち上がった。
「お前が嫌そうにしてるから今日を持って桃季のストーカーをやめる」
「え、え、ちょっと待てよ。あんな怖いこと言っといて守ってくんないのかよ?お前戦えるんだろ?その悪魔ってやつと。」
「あれ?信じるの?魔族?」
「いやいや、信じてるわけじゃ…ただ冬馬が言ってることが気になっただけだ。」
「ま、ストーカーが言ってることなんて信じる人いねえよな、嘘かもしれないし」
「嘘?」
「ただの暇つぶしだったかもだぜ?そこは桃季が判断してみ」
(なんだ、こいつ…)
冬馬は桃季の横をくぐって道路に出た。
「ちょっと待てよ」
桃季は道路に出ようとする冬馬を呼び止めた。
「もし家族が狙われそうになったら、お前は助けに来てくれんのか?」
「かもな」
「ってかなんで俺は狙われない?」
「…………」
「…そ。聞いたところでだよな」
「もう俺は行くぜ。もう会うことはないと思うけどよ、またな」
「おう。またなって会うかも知んねぇってことだよな?ま、いいけど。じゃーな」
冬馬は一回桃季の方を振り返ったがすぐに踵を返してどこかに行ってしまった。
「変なやつだよなーあいつも。でもなんかいいやつぽかったけどな〜」
すると、スマホの電話がなった。
「母さんだ、もしもし〜?」
『あ〜とおり?今日さ、百歌が帰ってきてるの』
「姉ちゃん?ひさしぶりだな…」
桃季の四個上の姉、ももかは現在一人暮らしをしている。
『そーそー。だから桃季、今日スーパーでイクラ買ってきてくれない?晩ごはん、ちらし寿司だから』
ちらし寿司は何か祝い事に食べるイメージのご飯だが百歌はちらし寿司は大の好物で母がよく作っている。
「うっす。買うものそれだけでいいのか?」
『そーね。うん。それだけおねがいしまぁす』
「はいはい」
電話を切って桃季は早速スーパーへ向かった。
「亀上桃季か」
一方の冬馬は今日のことをどう報告しようか考えてる最中だった。
(魔族のこと話したしな…だめとは言われてないけど…)
思った以上に桃季はフレンドリーで陽気な性格だった。
(馬鹿みてーに喋るやつだなあいつも…そんなあいつも俺と同じ運命をたどるっていうのにな)
『父さん?母さん?梨花?』
思い出したくもないあの記憶。真っ暗なリビングに明かりを灯したら血まみれの家族が無惨な状態で力尽きていた。
(明日だ。全ては明日なんだよ)
なにせあの亀上家だから魔族も入念に準備してるだろう。今までよりも強靭な魔族と対峙するだろう。
_______________________そうこれは亀上桃季を巡る魔族とそれを征伐する
魔闘使の物語である。
桃季は大きな物語に巻き込まれることを知る由もなかった。
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