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1話 ストーカーはちょっと変なやつ
「だーかーら!嘘じゃねんだよ!最近誰かにつけられてるんだって」
「えっとー」
「信じてねぇよな?ガチ!ガチだから!」
夏休み明け初日の放課後に煌葵(きらめぎ)高校2年生の亀上桃季(かめがみ とおり)は夏休みに起きた出来事を校長先生に話す。
「もう一回言うと、お盆前のサッカー遠征の帰り
にさ_」
「桃季君はずっと君のあとを付ける人に気づいたと…」
「そー!その後も外に遊びに行くときも視線を感じるわけ」
「で、桃季君はその人をうまく捕まえて誰かを探ろうとしたら_」
「逃げたんだよ!やばくね?これ犯罪だよな?」
熱弁する桃季はさっきから立ち上がってはその場をウロウロしている。
「こうちょーせんせーこれどう思う?」
「いわゆる君はストーカー被害にあってるってことだね?」
「そ!だから俺警察呼びたくてさー。こーちょーなんとかしてくんないかな?」
「うーん…呼びたい気持ちは山々なんだけどね…
証拠がないからねぇ。なんとも言えないよね」
「はっ?!そこをなんとかだよ!俺の命を危険に晒したままにすんのかよ〜」
かれこれ1時間はたっただろうか。もう4時になりかけている。
「…いやー校長先生も大変ですね」
「ですね〜」
二人がいる校長室の外では
数学科の相原司(あいはら つかさ)と桃季の担任、英語科の綴真木(つづり まき)がこっそりと話していた。実は真木も桃季と同じことを話していた。しかし桃季が納得せず校長先生の方へ相談を持ちかけたのだ。
「私がもう少ししっかりしてれば校長先生にもご負担はかからなかったのに…」
「いや、綴先生は何も悪くないと思いますが…。
しかし亀上君心配ですね」
「そうですよね…」
「あ、終わった?みたいですね」
ドアを覗くと桃季と校長先生が椅子を片付けている様子があった。
「私達もそろそろ行きましょう。」
その場から逃げるように相原らも動き出した。
「もー何なんだよ〜結局いい解決策出ねぇじゃん」
学校をあとにした桃季は家に帰宅している。
校長先生はすぐに会議があったそうで
出された結論が
『要注意して何かあったらまた相談に来るように』
だった。
「いやいやこれガチ目の事件だと思うんだけど
なぁ…ってかあちーーーー!!」
夏休みの終わりで今の時間帯が夕方といえどまだ季節は夏だ。ダラダラと汗をかいている。
蝉もミンミンと大合唱をしている最中だ。
ふと、学校の方をふり返ると校庭では野球部が熱心に練習していた。
(久しぶりにサッカー部ねぇよ)
夏休み中はお盆と最後の一週間以外はほぼ部活づくしだった。
灼熱の日々の中みんな音を上げながら必死に練習に励む姿を思い出すとそれはそれでいい思い出だったと桃季は思った。
「ん?」
前を向こうと思ったその時だった。
視界に見覚えのある人が写った。
フードを深くかぶり顔を隠しますくをしている。
そう、夏休み中桃季をずっとつけている奴だった。
(まーじかよ…。てかなんで俺なん?!)
何がきっかけでまた、何を目的として桃季をストーカーしているかなんて予想できなかった。
(…もしかして俺が学校を出るタイミングを狙ってずっと待っていたのか?)
だが、ただつけられているだけで何もされないし何も事件は起きない。
(くそ、話に行くか)
「あのさ、前にもあんた捕まえたけどさ何がも…」
桃季が話しかけると奴は逃げていった。
(逃がすかよっ!)
全速力で奴を追いかけるがヤツの足は異常なほど早かった。
(今度こそ捕まえて警察に突き出してやる!)
そして、2人は人通りの多い交差点の方へ出た。
近くの商店街をスイスイと進む。そして奴は左角を曲がった。
桃季も奴に沿って曲がると
「あれま」
そこは行き止まりだった。
飛び越えられそうな壁でもなく奴は行き場を失った。
「やーと止まってくれたかよ」
ぜえぜえと荒い息を立てて桃季は奴に迫った。
「まじで聞くけどさ、なんで俺をつけてんだよ」
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