1 プロローグ

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 私がタオルであちこち拭いている間に藤森はジャージを取り出していた。バスケ部の長袖ジャージだ。MATSUNAMIという中学名がプリントされている。 「ほらこれも着とけ」 「え、なんで?」  季節はまだまだ夏と言ってもいい時期。濡れたからといってたいして寒くはない。 「いいから」  そう言って私の手にジャージを押し付ける。ふと見ると、制服のブラウスが身体に張り付き、下着が透けて見えていた。 「……っ!」  慌ててジャージを着る。ジッパーを上まで上げて藤森を見ると、こちらを見ないように背中を向けていた。 「ありがと、藤森。助かる」 「別に。友達だろ」  雨の音はさっきよりは小さくなってきた。空も明るくなってきた気がする。 「もうすぐ止むかな」 「……だな」  パァッと日差しが射して一瞬のうちに雨が止んだ。 「じゃあな」  藤森はすぐに東屋を飛び出して帰って行った。 「これ、洗って返すね!」  後ろから叫ぶと了解、というように手を振って応えてくれた。
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