2901人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
私がタオルであちこち拭いている間に藤森はジャージを取り出していた。バスケ部の長袖ジャージだ。MATSUNAMIという中学名がプリントされている。
「ほらこれも着とけ」
「え、なんで?」
季節はまだまだ夏と言ってもいい時期。濡れたからといってたいして寒くはない。
「いいから」
そう言って私の手にジャージを押し付ける。ふと見ると、制服のブラウスが身体に張り付き、下着が透けて見えていた。
「……っ!」
慌ててジャージを着る。ジッパーを上まで上げて藤森を見ると、こちらを見ないように背中を向けていた。
「ありがと、藤森。助かる」
「別に。友達だろ」
雨の音はさっきよりは小さくなってきた。空も明るくなってきた気がする。
「もうすぐ止むかな」
「……だな」
パァッと日差しが射して一瞬のうちに雨が止んだ。
「じゃあな」
藤森はすぐに東屋を飛び出して帰って行った。
「これ、洗って返すね!」
後ろから叫ぶと了解、というように手を振って応えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!