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16 決戦の日
「咲桜ちゃん! イメチェン? いいじゃない!」
コンタクトに変えて出社すると、留里さんがとても褒めてくれた。少し明るくして緩くパーマをかけた髪も。
「眼鏡掛けてても綺麗な顔だとは思ってたけど、やっぱり目が一回り大きくなったわね」
「そ、そんなにですか?」
「まあちょっと大袈裟だけど、そのくらい見違えたってこと。ねえ、部長?」
通りがかった部長にまで感想を求める留里さん。
「そうだな。なんか明るくなったよ」
「ですよねー! さすが部長、わかってらっしゃる」
ふふふ、と笑って私に耳打ちする。
「これはきっと彼氏の出来の差よ。やっぱ武田くんはダメ男だったのねえ。咲桜ちゃん、このまま幸せになって、武田くんを見返してやりなさい!」
「はい、留里さん。そうしてやるつもりです」
ガッツポーズをして見せる私に、留里さんは安心したように笑みをこぼした。
そして日曜日。朝一番に予約した美容室でヘアメイクをしてもらった。
今までは結婚式に行く時も自分でセットしてたから簡単なハーフアップしか出来なかったけど、さすがプロ。エアリーに緩くしながらもきちんと編み込んでくれて、華やかな場に相応しい大人っぽい髪になった。これだけで気分がすごく上がっていくのがわかる。
今日は蒼が選んでくれたワンピースに、以前母からもらった大粒パールのネックレスとピアスを合わせている。あまり似合わないと思っていたパールだけど、こうして見ると年齢的にもしっくりきているような。
「凄く素敵ですよ。大人の女性の美しさが溢れてますね」
美容師さんにそう褒められて、お世辞とわかっていても嬉しくなってしまう。
「ありがとうございます。美容師さんのおかげです」
そう、今日の私なら自信を持って亮太と顔を合わせることが出来るはず。あなたに振られたかもしれないけれど、私は幸せに生きてるってそう思わせてやる。
タクシーを呼んでもらい、私はホテルへと向かった。
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