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17 過去とさよなら
そして披露宴は滞りなく終わり、最後のお見送り挨拶も済ませてようやくお開きになった。これからほとんどの友人達が二次会に流れて行くのだろう。
私はクロークでコートを受け取り、さっさと帰ろうとしていた。すると前方から甲高い声が聞こえる。
(嫌な予感……)
その予感はすぐ当たった。川上琴美がピンクの可愛らしいドレスを着て現れたのだ。髪はいつもよりカール強めでさらにフワフワしているし、私の年齢ではとても無理な格好だ。
「亮く~ん!」
手を大きく振りながら登場すると、亮太の腕に飛びついた。
「どうして来たんだよ琴美。二次会の会場で待ち合わせって言ったのに」
「待ちきれなくてぇ、来ちゃったぁ。同期の皆さんにもご挨拶したかったしぃ~」
同期たちが琴美に注目している。同時に私への視線もじりじりと感じられ私は背中を向けた。すると川上琴美が大声を出して周りの注意を引こうとする。
「あっ~、南野さぁん~! 二次会には行かないんですかぁ~?」
「やめろよ、琴美」
小声で亮太が制しているが、だってぇ~と譲らない。
「同期の人のお祝いなんですからぁ、一緒に行きましょうよぉ~。琴美、元の彼女さんが一緒にいたって平気ですよぉ」
やっぱりそういう意図があったんだ。自分が亮太の今カノだと周りにアピールするために。
はっきり断ろうと口を開いたその時。
「――せっかくだけど咲桜は俺と約束があるから無理だな」
「蒼!」
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