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「亮太、だいぶ嫌われたな」
同期が俺の肩をポンと叩く。気のせいか、声に嘲笑が含まれているように感じてしまった。
「ずいぶん年下の彼女に乗り換えたんだから、そりゃあ恨まれてるだろうな。しょうがないよ。気にするな、亮太」
「ああ、そうだな……」
披露宴の間も一度も目が合うことはなかった。咲桜は怒っているんだ。俺は悲しくなった。俺が、あの穏やかな咲桜をそんな風に変えてしまったんだと。
披露宴が終わり、俺は二次会への移動をするために同期たちと一緒にいたが、一人で帰ろうとしている咲桜の姿が目の端に映った。
(そうか、二次会は出ないのか。それなら良かった。琴美と会ったら余計に怒らせてしまうだろう)
ところがそこへ、琴美が現れた。二次会の会場へ直接来るように打ち合わせしておいたのに。
「亮く~ん!」
いつもは可愛いと思う琴美の声が今日は場違いに聞こえる。
「亮くぅん、待ちきれなくて来ちゃったぁ。あ、南野さぁん、二次会行かないんですかぁ~?」
同期たちが琴美を見て眉をひそめている。俺は慌てて琴美を止めようとした。
「やめろよ、琴美」
「だってぇ。同期の人のお祝いなんですからぁ、一緒に行きましょうよぉ~。琴美、元の彼女が一緒にいたって平気ですよぉ」
なんてことを言うんだ。場の空気を読まないにも程がある。咲桜が可哀想だろ。俺は琴美を黙らせようとしたが、その時。
「――せっかくだけど咲桜は俺と約束があるから無理だな」
低く落ち着いた声が響いた。
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