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20 亮太視点③
(なんだ、この男は)
背がかなり高くてイケメン。そいつが咲桜の肩を抱いて、そして彼女に甘い微笑みを向けている。まるで恋人のように。
「南野さん、それ、誰?」
ポカンとした顔で琴美が訊ねている。琴美のやつ、なんでそんなに顔を赤くしてるんだ?
「咲桜の彼氏ですが何か?」
「嘘っ」
琴美は即座に否定した。俺も信じられない。あの奥手の咲桜がこんな目立つ男と一緒にいるなんて。
「さ、咲桜、どういうことだよ? もう新しい男ができたのか?」
お前は俺に振られてショックを受けてたじゃないか。俺に結婚を迫っていたのはついこの間のことじゃないか。まだ俺を好きなはずじゃなかったのか。
「咲桜って呼ぶな」
男が怒りのこもった声で言った。
「彼女は俺の大切な人だ。軽々しく呼び捨てにされたくない」
そうしてそいつは咲桜の手を握ると、微笑んで立ち去って行く。そんな二人を俺はただ呆然と見送るしかできなかった。
「嘘。嘘よ、あんな素敵な人があんなおばさんと。絶対レンタル彼氏に決まってる。亮くん、騙されちゃダメよ」
琴美が口を尖らせて早口で喋っている。いつもの口調と全然違う。どっちが本当の琴美なんだろう。
(レンタル彼氏か……もしかしたら有り得るかもしれない。俺に見せつけたくてひと芝居打ったのだと考えたら納得できる。だって咲桜は、男を簡単に乗り換えるような器用な女じゃないんだから)
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