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「おい、まだ二次会会場に向かわないのか?」
外の喫煙スペースに行っていた同期が二人、ホールに戻って来た。
「あ、ああ。今行く」
俺の後ろで全てを見ていた同期たちの視線が痛い。俺と琴美はどんな風に思われているんだろう。
そんな俺の気持ちを知らずに、彼らは言葉を続ける。
「なあなあ、今そこで南野がすげえイケメンと車に乗って帰って行くの見たぞ。それがなんと、アウディのA7スポーツバックだぜ。俺らくらいの年でそんなの乗るなんてめっちゃ羨ましいな」
(は? そんな車に乗ってる男がレンタル彼氏のわけないよな。じゃあやっぱりあれは彼氏……?)
「もう、亮くんたら! もういいでしょぉ? そんなことより早くお友達に琴美を紹介して?」
俺の腕に絡みついて拗ねた顔をしている琴美。なぜだろうか、咲桜の美しさを見てからは琴美の仕草が可愛く思えない。ただただ子供みたいだ。
「あ、ああ……えっと、俺が今付き合ってる川上琴美さん。同じ部署だ」
とりあえず琴美を紹介したが、同期たちが皆ニヤニヤ笑っているように見える。あんないい女を振ってこんな女を選んだのかと言われている気がしてしょうがない。
「よろしく、琴美ちゃん。若い彼女で羨ましいよ」
「やだぁ~、そんなことないですよぉ。若すぎて至らないことばかりですけどぉ、よろしくお願いしますねぇ~」
琴美の甘ったるい声を聞きながら、俺の選択は本当に正しかったのか、実は間違いだったのではないかと後悔が胸に押し寄せていた。
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